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労務管理から考えるIT利活用(1)

みなさん、こんにちは。社会保険労務士の樋口です。

 

 日本は、相変わらず長時間労働の国です。厚生労働省の「労働時間等の状況」によると、平成25年の労働者1人あたり年間総実労働時間数が1746時間であるのに対して、令和2年のそれは1621時間と減少しています。厚生労働省は、労働者1人あたり年間総実労働時間数を1800時間以下にすることを目標と掲げており、一見目標を達成しているようにも見えます。しかしこれを正社員労働者に限ると、平成25年の労働者1人あたり年間総実労働時間数が2018時間であるのに対して、令和2年のそれは1925時間と2000時間前後から減少していないのです。

 

日本は経済大国第3位ですが、就業者1人当たりの生み出すGDPは26位(2020年)と極めて低く、この労働生産性の低さを長時間労働で補っているのです。令和2年4月から、中小企業においても時間外労働の上限規制が始まっています(一部職種・業種については、令和6年4月から)が、法律で規制しただけでは長時間労働は決して是正されないと思います。

  

日本の働き手が長時間労働に陥りやすいのは、低労働生産性のほかに離職率の高さがあります。

 

厚生労働省の「令和2年雇用動向調査」によりますと、一般労働者の入職率が10.7%であるのに対して、離職率は10.7%、パートタイム労働者の入職率が22.2%であるのに対して、離職率は23.3%となっています。つまり、会社に就職したとしても、ほぼそれと同じ人数の従業員が辞めてしまうのです。

 

また、令和2年 1 年間の 離職率を離職理由別にみると、「個人的理由」(結婚、出産・育児、介護・看護など)によるものが10.1%で、「事業所側の理由」(経営上の都合、出向など)によるものは1.1%に過ぎません。 

 

入社して間もない従業員に、いきなり難度の高い仕事を任せるわけにはいきませんよね。まあ、スーパーサラリーマン的な人も、たまにはいるかもしれませんけど。

 

入社して間もない従業員は、会社からすると、まだ利益を出してもらえない従業員です。5年、10年と会社の中で経験を積み、専門的なスキルを磨くことで、会社に利益をもたらす従業員になるわけです。それはつまり、労働生産性が向上していることにほかならないのです。

 

高卒で就職した者の約4割、大卒で就職した者の約3割が、3年以内に会社を辞めてしまいます。これでは、労働生産性は向上しませんよね。 

 

平成30年エン・ジャパンの調査によりますと、エン転職登録者が退職を考え始めたきっかけ第1位は「給与が低かった」、第2位「やりがい・達成感を感じない」、第3位「企業の将来性に疑問を感じた」、第4位「人間関係が悪かった」、第5位「残業・休日出勤など拘束時間が長かった」だそうです。

 

第1位~第4位の解決策はまた別に考えるとして、第5位の解決策は労働生産性の向上に求めることができると思います。また、順位は低くなりますが「結婚・家庭の事情」も14%を占めています。

 

私は社会保険労務士なので、労務管理部門のお話しとなってしまうのですが、「残業・休日出勤など拘束時間が長かった」「結婚・家庭の事情」はICT(クラウド、RPA、テレワーク)の導入により解決できるのではないかと考えています。

 

次回は、ICTとは何か、またクラウドとは何か、その基礎的なお話しをさせていただきます。

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